実用英語技能検定、いわゆる「英検」。高校時代・学生時代に受験した記憶がある人も多いでしょう。どのような試験を受けたか、覚えていますか?英検は一次試験と二次試験に分かれています。一次試験の合格ラインに到達している人だけが二次試験を受験することができるのです。
英検の一次試験には
- リーディング
- リスニング
- ライティング(※2017年2月現在、4級・5級はライティングなし)
の3つのセクションがあります。2015年まではそれぞれのセクションで配点が異なっていました。リーディング→リスニング→ライティングの順に配点が高い、という仕組みです。そのため、各セクションの得点にばらつきがあっても、合計点が合格基準を満たしてさえいれば合格する可能性があり、「得意なセクションを得点源にして、苦手なセクションは最低限がんばればいい」という方法を取ることができたのです。
しかし、2016年より英検には「英検CSEスコア」という基準が導入されました。リーディング・リスニング・ライティングのスコア配分が均等になり、各セクションでバランスよく得点を得なければ合格ができない仕組みになっています。そのため、リーディングだけではなくリスニング・ライティングのトレーニングが、今まで以上に重要になってきます。最近英語教育が変わりつつあるとはいえ、いまだに「読み書き」がメインになっているのが日本の英語教育。リスニングやスピーキングに苦手意識がある人もまだまだ多いでしょう。英検においてスピーキングの力は二次試験で問われますが、その二次試験へ進むために、まずは一次試験を突破しなくてはなりません。そのために今後力を入れるべきは「リスニング」です。
この記事では、「リスニング」について、
- そもそも「リスニング」とは?
- 英検で点を取れる「リスニング」対策
について、それぞれ詳しく解説していきます。
そもそも「リスニング」とは?
「リスニングって、音声で流れてくる英語を聞いて問題に答えるやつでしょ」
という認識を持っているだけでは、リスニングでの高得点は狙えません。まずは「言語とは」「リスニングとは」という根本について理解をしておきましょう。遠回りに思えるかもしれませんが、そんなことはありません。その後の学習にかならず役に立ちますよ。
言語の基本は「音」
本やスマートフォンなどで文字に触れることが多いと忘れがちですが、言語の基本は「音」です。文字を持たない言語は存在しますが、音を持たない言語は存在しません。(手話は「音声を持った言語を音声を使わずに表現する方法」なので、この場合の「言語」とは別です。)
「文字」と「音」の違いは下記のとおりです。
文字
- あとに残る(あとから振り返って読み、理解することができる)
- 読む順番を読み手が決めることができる
音
- あとに残らない
- 聞く順番を聞き手が決めることができない=耳から入ってきた順番に理解する必要がある
言うまでもなく「リスニング」はこの「音」の情報を処理する技術です。リスニングの学習においては、この「音」の特徴の2つめ、「耳から入ってきた順番に理解する必要がある」を特に念頭におく必要があります。
「リスニング」の基本2段階
「リスニング」の技術は
- 音が聞き取れる
- 聞き取った音を認識し、その意味を理解できる
という2段階にわけることができ、それぞれ必要なトレーニングが異なります。どちらのトレーニングを行う場合も、
- 語と語のつながり(例: I have a 〜は「アイ ハブ ア」ではなく「アイ ハバ」となる)
- 音の変化(例:littleは「リトル」ではなく「lidl」、familyは「ファミリイ」ではなく「famly」)
- 日本語と英語のアクセントの違い(日本語は高低アクセント、英語は強弱アクセント)
という3点に注意しましょう。
2-1 「音を聞き取る」ためには
「そもそもなんと言っているのかがわからない」という状態では、「意味を理解する」ことは難しいでしょう。「英語を聞き取る」ためには、適切なトレーニングを積むことが必要です。
トレーニング1:シャドーイング
「シャドーイング」とは、音声として聞いた英語をすぐに追いかけるようにして自分でも発声していく、というトレーニング法です。自分の声が流れる音声のすぐあとに影(shadow)のようについていくことから「シャドーイング」と名付けられたと言われています。
とはいえ、最初から聞き取った英語を正確にすべてシャドーイングできることは少ないでしょう。何と言っているのかわからず、何を言っていいのかもわからず、パニックになって終わってしまうかもしれません。そんなときはこのようなステップを踏みましょう。
まず音声だけを聞く
一切情報がない状態でシャドーイングをするのはとても難しいものです。まず、シャドーイングはせず、音声だけを聞いてみましょう。
心の中でシャドーイングをする
慣れないうちは、シャドーイングをする自分の声が邪魔で音声が聞き取れなくなってしまう、ということもあります。それを防ぐために、心の中で、もしくは口だけを動かし声を出さない形でシャドーイングをしましょう。音声がきちんと聞き取れる分、シャドーイングもしやすいはずですよ。
スクリプトを黙読し、ざっと意味を理解する
ここで初めて書かれている英文を読み、自分が音声でとらえていた文章との差異を確認します。
スクリプトを見ながら音声を聞く
スクリプトを見て、音と音のつながりや強弱を意識しながら音声を聞きます。
シャドーイングをする
スクリプトは見ず、音声だけを聞いてシャドーイングを行います。最初に聞いたときよりも格段に聞き取り・発声ができるようになっているはずです。
なお、前提としてシャドーイングをするのは自分が「やや難しい」と思うレベル(わからない単語や構文などはあるが、調べれば理解できる)の英文にしましょう。簡単すぎるとシャドーイングをする意味がありませんし、英文を読んでも理解できないようなレベルであればシャドーイングをしても意味がわからず終わってしまうだけです。
トレーニング2:ディクテーション
「ディクテーション」とは、聞き取った音声を文字として書き出す、というトレーニング法です。
最初から聞き取った文章全てを書くのは難易度が高いので、下記のステップで進めていきましょう。
穴埋め式のものでディクテーションをする
まずは「単語」を聞き取ることから始めます。穴埋め式の教材は空欄の部分だけを意識して聞くことができるので、聞き取りが比較的簡単で取り組みやすいでしょう。最初のうちは動詞や名詞、形容詞などを意識し、慣れてきたら前置詞や接続詞などにまで意識を広げましょう。
一文ずつディクテーションをする
「単語を聞き取る」段階の次は「文章を聞き取る」ことを意識します。
なお、ディクテーションのトレーニングをするときは、「正しい綴り」にこだわる必要はありません。知らない単語でも「こんな感じかな?」と予想して書き留め、あとから見直すことで単語力のアップにもつなげることができます。
2-2「聞き取った音を認識し、意味を理解する」ために必要なのは「直読直解」
音声を聞き取ることができても、その英文の意味を理解できなければ意味がありません。音は次から次へと流れていきます。聞いたときに全てを日本語に訳して意味を理解してしるのでは間に合わないため、英語を英語のまま理解する「直読直解」ができるようにトレーニングをする必要があります。
英文を「前から」理解していく
あなたは「同時通訳者の日本語」を聞いたことがありますか?
I was born in Tokyo in 1981.
という英文について、普通は「私は1981年に東京で生まれました」と訳しますよね。
しかし同時通訳者は「私が生まれたのは東京で、1981年のことでした」というように、訳せる部分は前からどんどん訳していきます。「I was born」という英語を聞いた時点で「私は生まれた」と言ってしまい、その後必要な情報を付け足すのです。
リスニングに限らず、リーディングの学習をするときでも、出てきた情報をとにかく前から理解していくようなクセをつけるようにしましょう。大切なのはきれいな「日本語訳を作ること」ではなく、「英語をそのまま理解する」ことです。
知っている単語を音として認識できるようにする
単語を覚える際、アクセントの位置にも注意を払うようにしましょう。文章の中で、単語全てが聞き取れなくても「あれ、これはあの単語かな?」と推測できるようになればなおいいですね。
英検で点を取れる「リスニング」対策
リスニング試験には読解力が必須
リスニング試験とは「耳を使って行う読解力の試験」です。英語の読解力がなければ、リーディングだけではなくリスニングでも得点は取れません。リスニングに特化した訓練ももちろん必要ですが、それ以前に「英語の読解力を鍛える」ことが大前提です。
音声がついている教材を使い、音声と同じスピードで英文をそのまま理解できるようになるように繰り返しトレーニングを行いましょう。リスニングだけではなくリーディングの問題を解く速度も上がり、どちらも得点に繋がります。
音声として聞き取れているかどうかの見極め
なかなかリスニングの点数が上がらないが、どんな対策をすべきかわからない、そんな場合は下記の手順で「何が不足しているのか」を見極めましょう。
- まず、リスニング試験と同じ形式の問題を解く
- スクリプトを見ながら再度音声を聞く
- 音声と同じスピードでスクリプトを読みながら、もう一度問題を解く。1と回答を変えてもいい。
ここまで終えたら、1の場合と2の場合の点数を比較してください。
1より2の点数が高い場合、スクリプトを読めば点数が上がっているということですから、逆に考えれば「音声として聞き取れていないために得点を落としている」ということです。その場合は「音を聞き取れるようになる」ためのトレーニングを重点的に行いましょう。
1、2で点数に大きな変化がない場合、スクリプトを読んでも理解できていないということです。音声として聞き取れているかどうかではなく、読解力不足が原因なので、「読解力を上げる」ためのトレーニングをまず積みましょう。
「英検のリスニングテスト」のコツ
3-1 場面設定のパターンに慣れる
英検のリスニング問題に出てくる表現や場面設定などはある程度パターンが決まっています。以下に挙げるキーワードについて、「あっ、こういうの聞いたことある!」というもの、ありませんか?その「聞いたことある!」を増やしていきましょう。そのためには過去問や類題を数多くこなすことが近道です。
場面
- 空港や駅:搭乗ゲートや登場時間の変更のアナウンス など
- 店:欲しい商品の場所の確認、値下げ交渉 など
- 道案内
- ニュースや天気予報
- 公共な場でのアナウンス
英文のパターン
- 時間や時期:待ち合わせの時間、旅行に行った時期 など
- 金額:いくらで買ったのか、値引き幅はどれくらいか など
- 場所:パーティの開催場所の変更、会話が行われている場所の推理 など
3-2 できる限り選択肢は先に読む
英文を聞く前に選択肢を読むことで、ある程度「こんな感じの英文かな」と推測することができます。推測した上で聞くのと推測せずに聞くのでは、理解度が段違いです。可能な限り、英文を聞く前に選択肢に目を通しましょう。ただし、音声がスタートしたら、選択肢ではなく音声に集中しましょうね。
3-3 トラップに注意
英文の中で聞き取れた単語が選択肢に入っている場合、「おっ」と思ってその選択肢を選びがちですが、トラップである可能性が十分にあります。「さっき聞いた単語が入っているから」と安易に選ぶのではなく、英文をきちんと読んだ上で選択しましょう。トラップに引っかからないために、先述の「選択肢は先に読む」というテクニックは有効です。
リスニング以外の英語の勉強のときもリスニングを意識しよう
英検に向けて勉強をする場合、リスニングにばかり時間を割くのではなく、リーディングやライティングの勉強も並行して進める必要がありますよね。試験までに時間がないときはリスニングの勉強を省きたくなってしまうこともあるでしょう。
そんなときは、リーディングやライティングの勉強であっても「リスニングの能力向上にもに繋がるように」意識すればいいのです。たとえばリーディングの勉強の際、英文をある程度のスピードでぶつぶつと読みながら問題を解けば、シャドーイングと似たような効果が得られます。また、ライティングの勉強の際の「こういうシチュエーションではこんな表現を使う」という蓄積は、リスニングにおける場面別の表現の意識に繋がります。
試験の特性上 「リーディング」「リスニング」「ライティング」と分かれてはいますが、どれも「英語」です。勉強の意識を少し変えるだけで、全てに繋がる学習ができますよ。「リーディング」「リスニング」「ライティング」と分けた試験はもしかしたら今後、時代遅れになるかもしれませんね。その時代の英検は一体、どんな試験になっているのでしょうか。