ビジネス英語を使っていて戸惑うのが、日常会話との「単語の意味の違い」です。相手は知っている単語ばかり使っているはずなのに、文全体の内容が理解できない。「この単語、もしかして違う意味なのかな?」と混乱したことはありませんか。そこに日本の英語教育の問題があります。
試験に受かるため、とにかく暗記させるため、基本的に1つの単語に1つの意味しか教えないのです。市販の単語帳も覚えやすさ、見やすさを追求し、1単語に1つの意味しか書いていないことも多いです。しかし日本語でも「あう」という言葉にいろんな意味やニュアンスがあるように、英単語も時に様々な意味を含んでいます。そこを理解せずに、いきなりネイティブの英語表現に触れると混乱の元になります。ビジネスの重要な局面で間違えてしまわないよう、実践で使える英単語の勉強法をご紹介します。
1 基本の英単語の意味、ちゃんとわかってますか?
ビジネス英語というと複雑な専門用語や難解な語彙が必要だと思っていませんか。確かに日本語だと敬語やウチ・ソトの関係が重要なため、新たに覚えなければいけない動詞(尊敬語・謙譲語)が多いですが、英語のビジネス会話は日本語ほどではありません。もちろん普段より丁寧な表現やソフトな言い回しが好まれますが、単語で見ると日常会話の延長で使えるものがほとんどです。
そこで大切になってくるのが「そもそも基本的な英単語をマスターできているのか」ということです。冒頭でも述べた通り、1つの英単語にいろいろな意味が含まれている場合も多く、日常よく使われる単語ほどその傾向は強くなります。例えばカタカナ英語としても定着している「address(アドレス)」という単語。ぱっと思い浮かぶ意味としては名詞の「住所」ですが、その他にこんな意味があります。
addressの意味
- 名詞…演説、講演、式辞
- 動詞…演説する、話しかける、宛名を書く、申し入れる、取り組む
会話の中でいきなり「addrees」と出てきて、この中から適切な意味を選べますか。このように、もうすでに知っていると思っている単語にこそ落とし穴があります。
1-2 GSLの基本単語をしっかり学べるテキスト
GSL(Genaral Service List)とは、英語教育の専門家たちが選び出した約2000語の基本単語のリストです。このGSLの見出し語とその派生語を覚えると、話し言葉の約90%、書き言葉の約80%が理解できると言われています。リストは「the」や「a」から始まり、一見簡単そうな単語ばかりが並んでいます。しかし先ほどの「address」のように、これらの使い方を本当にわかっているかが問題です。そこでこのGSL単語すべてを網羅し、それぞれの使い方も詳しく解説しているテキストをご紹介します。
このテキストの良いところは以下です。
- よくある単語帳のスタイルではなく、1つの会話文の中に単語の様々な使い方が盛り込まれている
- CDで会話文を繰り返し聞くことで、自然とその単語の使い方が頭に入る
- 詳細な解説がある
- GSL単語を扱っているため基本的な英単語の復習ができる
例えば最初に登場する単語は「tell」です。
紹介されている使い方は次の5つ。
- 言う
- 尋ねる
- 叱る
- 命令する
- 指示される
「tell」の項目にはこれらの使い方をすべて含んだ会話文が掲載されており、どういう状況で使うかも把握できます。また「言う」の解説には「say」との違いが書かれていたり、実際に使う上で便利な情報も得られます。
2 ビジネスの基本単語を押さえたいならこのテキスト
中学・高校レベルの英単語は大丈夫だけれど、ビジネスによく使う基本的な単語を覚えたい、という人にオススメなのがこちらです。
TOEICのための単語集ですが、ビジネス英単語の習得にも最適な理由があります。
- 高校までに習った単語は除外しつつ、ビジネスに頻出の単語を扱っている
- 1冊まるまる外資系会社のストーリー仕立てになっており、会話がほぼビジネス会話
- 2~3分ほどの会話の中に新出単語が4つという構成なので、電車の中などで簡単に勉強できる
- 出てくる単語は「取締役会」「議事録」「人事部」など、学校では習わなかったけれどビジネスでは必須、というものばかりです。
もちろんTOEICの頻出単語を元に作られているので、これ1冊覚えればそのままTOEIC対策にもなります。
3 例文豊富なビジネス英単語集
実際にビジネスで英語を使っていると、こんな疑問がよく浮かびます。
「この単語はビジネスにおいてはどういう意味だろう」
「この日本語は英語でなんて言うんだろう」
単語の意味はネットで検索すればすぐにヒットしますが、似ている類義語のどちらを使っていいかわからない時や、例文も一緒に知りたい時に使える単語集があります。
ビズネスの現場でよく使われる英単語400に対し、2000のコロケーション(その単語と他の単語の組み合わせ)が収録されています。各単語にビジネスの現場ではどう使うか説明があり、豊富な例文と共に覚えることができます。アルファベットからも日本語からも検索できるので、会話というよりビジネス文書やメール作成の際に手元にあると役立つでしょう。
4 よりスマートに伝わる単語力を手に入れるには
日々の会話はこなせているけれど、自分の使っている英語はどうも簡単すぎて幼稚な気がする。伝わればいいというだけではなく、よりスマートな表現ができないだろうか。ビジネス会話に慣れてくると当然出てくる疑問です。同じ内容を話していてもネイティブの英語表現はシンプルかつわかりやすいのに、自分はそのように話せない。そんな悩みを手助けするのがこちらのテキストです。
同時通訳者が教える ビジネスパーソンの英単語帳 エッセンシャル
人間は若い時に覚えたことの方が忘れにくいもの。英語でも、とっさの時に出てくるのはいつまでたっても中学英語ということになりがちです。この本ではそんな安易に使ってしまっている単語をより伝わりやすく、イメージしやすい単語に言い換える方法が紹介されています。例えば他の人にアイデアを「言う」時、そのまま「tell」や「say」を使いがちだけれども、ビジネスの世界では「分かち合う」という意味の「shere」を使う、など。
1つ単語を入れ替えるだけでグッと相手に訴える表現に変わります。他にビジネスの世界では失礼に当たる言い回しも紹介されていて、実用性が高いです。さらにもう一つオススメのポイントは、この本のサイズです。大きい本が多い英会話テキストの中で、手のひらにおさまるこの本はビジネスバッグにも入れやすく、空き時間にさっと目を通すことができます。
5 ネット翻訳機能の使い方
さっきの会議でクライアントがなんて言っていたか知りたい、急ぎのメールの内容を確認したい、そんな時はネットで簡単に意味を調べたいですよね。機械翻訳で評判の悪かったgoogle翻訳ですが、最新のシステム導入に伴い翻訳精度が向上しました。
以前は意味不明な翻訳になってしまっていた長文でもかなり正確に訳せるようになっています。
しかし単語レベルの翻訳だと、1単語に1つの意味しか表示されません。試しに「address」と入力すると、翻訳結果には大きく「住所」と表示され、その下に小さく他の翻訳結果が出てきます。
次にweblio辞書で「address」を検索すると、まず主な意味としていくつかの訳が出てきて、その下に各英和辞典に掲載されている意味と例文が出てきます。
情報量が多く求めている意味にたどり着くのに時間はかかりますが、辞書を引くようにいろんな角度からその単語を知りたい時には役立ちます。逆にピンポイントでよく使われる意味だけを知りたい、という場合はgoogle翻訳でいいでしょう。
6 どうやって単語を覚えていったらいいのか?
単語帳をいくら買い揃えても、覚えなければ何の意味もありません。どこかで聞いたことがあるような単語ならまだしも、初めて見る単語って本当に覚えづらいですよね。特にビジネス単語は専門用語も含め、長くて発音しにくいものが多いです。そのような単語を、ただ本を眺めて目だけで記憶していくのは至難の業です。他の五感も使って、目的別にアプトプットできるように覚えていきましょう。
6-2 会話や電話でビジネス英語を使いたい
ビジネスの場で英語を話すことが多いなら、英単語も耳と口を使って覚えて行ったほうが便利です。具体的にはCDを聞いて、聞こえてくる例文や単語を全部声に出してリピートして行きましょう。CDと同じ速さで発音できるようになるまで繰り返してください。せっかく覚えた単語なのに、いざという時に舌が回らなくて使えなかった、なんてことになったらもったいないですよ。舞台の俳優は「口が覚えるまでセリフを練習する」と言います。そうすると緊張感漂う本番の舞台で、頭が真っ白になったとしても口が覚えたセリフを発してくれるのです。あなたもビジネスでスマートに会話を進めたいなら、単語を頭のフォルダに詰め込むだけでなく、ちゃんとアウトプットできるよう練習しましょう。
6-3 メールや文書でビジネス英語を使いたい
話すより書くほうが多いなら、やはり書きながら覚えるのが効果的です。といっても昔の試験勉強みたいに紙にひたすら単語を書く、なんてことはしなくてもいいです。今どきビジネス文書でも手書きはないでしょうから、タイピングの速度を早めるためにも、パソコンに例文を打ち込んでいきましょう。中にはゲーム感覚でビジネス英単語のタイピングが練習できる無料サイトもあります。
インターネットでタイピング練習 イータイピング | e-typing 英語タイピング
また、今はメールだけのやりとりだとしても、将来電話やTV会議で英会話が必要な局面も出てくるかもしれません。書いて覚えるだけでなくCDを聞いたり声に出してリピートしたりして、耳と口からも覚えるようにしておくと、いざという時に慌てなくてすみます。
7 テキストは1冊ずつ終わらせよう
英語を勉強しなければいけなくなってから、あなたは何冊のテキストや英語上達法の本を買いましたか?そのうちの何冊を終わらせたり、書いてある内容を実践したりしましたか?もし何冊ものテキストを持っているだけですでにやった気になっているなら、いつまでたっても上達しません。まずは新しいテキストに目移りするのをやめて、手持ちのテキストの中で一番自分の目的に合っているものを選んでください。そして期限を決めて、その本を1冊終わらせてください。ふつうテキストは簡単な内容から徐々に難しい内容へと変わります。どんなに薄い本でも1冊やれば、全部は覚えられなくてもかなりの知識が入ってくるはずです。そして自分の足りない部分に気づいたら、同じ本で何度でも復習しましょう。英語学習は覚えて使えるようになって初めて意味があります。たくさんの本から中途半端な知識を手に入れるより、1冊を何度も繰り返す方がはるかに役立ちます。もしあなたが忙しくて家でテキストを開く気力がないのなら、kindleのアプリをダウンロードして、テキストを電子書籍で買ってはいかがでしょうか。本屋より安く買えますし、音声データもダウンロードできます。スマホやタブレットにテキストを入れて持ち歩けば、ちょっとした空き時間を使って少しずつ勉強を進めることができますよ。
8 まとめ
いかがでしたでしょうか。ビジネス英単語というと特別で難しい感じがしますが、実は新たに覚えるべき単語はそれほど多くありません。まずはすでに知っている手持ちの単語を正しく使いまわせるようになりましょう。単語数だけ増やしても使えないのであれば宝の持ち腐れです。簡単かつ適切な言い回しと、あなたの業種特有の専門用語さえ覚えてしまえば、あとは焦ることはありません。実践を繰り返す中で足りない部分を補っていけばいいのです。やみくもにいろいろな勉強法に手を出すのではなく、1つずつ確実に身につけることをオススメします。