ネイティブの発音をいくら真似しても通じなかった経験、ありませんか?そんなときは発音記号を覚えると便利です。英語は発音記号の通りに読めば、耳から聞いた音を頼るよりも正確に言えるようになります。しかし、それだけで通じる発音が身につくわけではありません。今回は、発音記号を使った練習方法と、さらに通じる英語を身に付けるための方法をご紹介します。
日本語にない音を知ることが、正しい発音の第一歩
日本語は「あ」と書けば読み方は「あ」だけですが、英語は前後のアルファベットの組み合わせで読み方が変わります。英単語を覚えていくうちにだんだんルールを覚え、初めて見る単語でもどう発音するかがわかるようになります。
例えば「park」や「art」の「r」はラ行ではなく、「ar」の2文字セットで「アー」のような発音になることは知っていますよね。注意しなければいけないのは、英語には日本語にない音があるということ。
有名なのは「L」と「R」の違いです。日本語はこの2つの音の使い分けをしません。そうすると「rice」(お米)も「lice」(シラミ)も同じように聞こえ、同じように発音してしまいます。「そんなの前後のつながりでわかるでしょ」と思うかもしれません。確かに、あなたがその他の単語を正確に、文法のミスなく話していればわかります。
しかし他の単語の発音もあやふやだったり、文法に致命的な間違いがあったりすると、話はどんどん変な方向へ。まずは日本語にない英語の発音をしっかり認識することが大切です。そのためにはアルファベットを眺めるより、発音記号を介して単語を練習したほうが早く身に付きます。でも発音記号って、いったいどのぐらい覚えなければいけないのでしょうか。
発音記号は丸暗記よりも苦手の克服が近道
英語の発音記号の数は、実は決まっていません。「a,i,u,e,o」以外を表す子音の発音記号は約24個ですが、母音の発音記号は9個~30個以上までとさまざまです。アメリカ英語とイギリス英語でも違いますし、学者によっても判断が異なるため、はっきりいくつと言えないのが現状です。ですから発音記号を丸暗記するよりも、今知っている単語をしっかり区別して発音する練習をしましょう。例えば「work」と「walk」。カタカナだとどちらも「ウォーク」になってしまいます。
しかし「or」と「al」が同じ発音であるはずはありまぜんし、実際「ウォーク」と言っても通じません。日本人が最初につまづくのは、実は「TH」や「L」と「R」といった子音よりも、「o」や「a」といった母音の発音であることが多いです。この母音の発音について、次にご説明します。
1つの母音に複数の発音がある
発音をどこから練習していいかわからない人は、まず母音からマスターしましょう。母音とはアルファベットで「a,i,u,e,o」の五文字。日本語だとそのまま「あ、い、う、え、お」と5つの読み方をしますよね。これが英語だと「ア」と聞こえる発音だけでも「æ」「ɑ」「ʌ」「ə」と4種類の発音記号があります。いきなり耳でこの4つを区別することはできません。
しかし「母音にはいくつも発音がある」ということをまず知って、発音記号にそって1つ1つ練習していけばそこまで難しくはありません。実は発音の上達に必要なのは記憶力や聴力ではなく、舌の筋力です。筋力を鍛えるためには反復練習が有効です。次に、具体的な発音の練習方法をご紹介します。
発音は頭や耳ではなく、舌で覚える
発音の練習でポイントになるのは、唇と舌の動きです。そこをきちんと押さえておかないと、耳からコピーするだけではなかなか日本語にない発音は身につきません。右利きの人が左手で文字を書くのって、けっこう難しいですよね。全然書けないことはないけれど、慣れていないのでガタガタの文字になるんじゃないでしょうか。私も試しに自分の名前を左手で書いてみましたが、画数の多い漢字が読めないくらい崩れてしまいました。
左手でパソコンのキーを打ったり、本のページをパラパラめくったりする動作は簡単にできるのに、文字を書くには準備不足です。舌や唇もこれと同じで、英語特有の「a」の音を出そうとしても、口が勝手に日本語の「ア」の音を出そうとしてしまいます。ふだん日本語でずっと話しているのですから、当然と言えば当然です。
舌や唇に慣れない動きを定着させるには、どうしたらいいでしょう。そう、トレーニングですね。言いにくい音を1つずつ、舌が覚えるまで練習しなければなりません。そうでないと実際の英会話のとき、無意識に日本語の発音に戻ってしまいます。
発音筋を鍛える方法
ここに日本人が間違いやすい発音記号の読み方を解説しているサイトがあるので、目を通してみてください。
それぞれの発音記号に対して、口の開き方や唇の動きが丁寧に説明されています。指示に従って見本の単語を読んでみるだけで、ちょっと発音が上手になったように感じませんか。英語の発音は、日本語にない音の口の動きを覚えることで必ず上達します。先ほど挙げた「work」と「walk」のような音が似ている単語を、音声と動画で学べるサイトもあります。
母音の発音│pronunciation-english.com
唇の写真をクリックすると、各発音記号の口の動きが見られます。例として挙がっている単語も全て音声が聞けますので、自分がどの程度聞き分けられるか試してみてください。注意深く聞くと、各単語の微妙な違いを感じることができますよね。そこが、発音練習のスタート地点です。
発音記号を極められるおすすめテキスト
ネットの解説ではいまいちよくわからない、もっと詳しく発音記号の練習をしたいという人には、この本をおすすめします。
おすすめ理由は何といっても、DVDが付いていること。約2時間、母音と子音の音声の出し方をレクチャーしてくれます。正しい発音のポイントは舌の位置や口の形ですから、CDを聞くより動画で説明してくれた方がわかりやすいです。独学にいまいち自信が持てない人にも、おすすめの1冊です。
発音記号をマスターしたら、知ってる単語で練習しよう
発音の練習は、次の順番でやるとスムーズです。
- 発音記号の音を舌が覚えるまで何度も言う
- その発音が含まれている単語を練習する
- まぎらわしい発音の単語も一緒に練習する
発音記号を覚えただけでは上手に言えるようになりません。単語ごとに発音記号を意識しながら言う練習が必要です。特に今までなんとなく言っていた簡単な単語ほど、口が慣れてしまって正しく修正するのが難しいことも。新しい言葉を覚える前に、知っている単語を総復習しておきましょう。
発音練習におすすめのアプリ
iPhoneユーザーなら、こちらのアプリを使うと基本的な単語の発音チェックができます。
このアプリの良い点をお伝えします。
- ネイティブの音声が聞ける
- 自分の発音も録音して聞ける
- ネイティブとの発音の違いを発音記号で教えてくれる
- 基本的な単語をくり返し練習できる
どう聞こえたかを発音記号で表示してくれるのは、他の発音練習アプリにはない機能です。自分が苦手だと思っている以外のところでひっかかったりして、思わぬ弱点も発見できます。アプリだと場所を選ばず練習できるので、ダウンロードしておいて損はないでしょう。
テキストは発音記号が書かれているものを選ぼう
単語のテキストを使う場合は、全単語に発音記号が書かれているものを選んでください。音声CDが付いているとなおいいですね。反対に発音練習をうたったテキストの方が、簡単なイメージを出すためにあえて発音記号を使わず、カタカナ表記を多用していたりします。長い目で見るとどちらが自分の英語力アップにつながるか、よく考えてテキストを選ぶようにしましょう。
発音練習は退屈なもの。一気にやりすぎない
本来ならば、まず発音記号で英語特有のルールを覚えてから、会話文の練習をする方が理にかなっています。しかし日本の英語教育では発音記号はさらっと流して、すぐに文を作ったり読んだりする方に移ってしまいますよね。もう一度基本に戻って単語ごとの発音練習をするのが、つらく感じるかもしれません。発音は舌の筋力トレーニングですから、一気に詰め込むよりも毎日少しずつ続ける方が身に付きます。
大切なのは、新しい単語よりも先に中学生レベルの単語から覚えなおすこと。簡単な単語ほど使用頻度が高く、間違った発音のまま使っているといつまでも違和感が抜けません。基本単語をきちんと押さえれば、知らない言葉を聞いてもすぐ書いたり話したりでるようになります。今までローマ字読みで覚えていた単語もスムーズにインプットできて、便利ですよ。
発音を意識しすぎると逆に聞きづらい
単語の発音練習をがんばった人がおちいりやすいのが、1つ1つの音をしっかり発音しすぎて不自然になる問題です。日本語でも、
「東京駅へはどう行けばいいですか」
という文を1単語ずつはっきり発音すると、このようになります。
「とうきょう、えき、へ、は、どう、いけば、いい、です、か」
自然に読むと「とうきょうえき」の「え」は弱く発音し、最後の「ですか」の「す」はほとんど息の音になります。私たちは日本人なので多少不自然な話し方をされても理解できますが、違和感が大きいですよね。英語も単語の組み合わせによって、文の中で強く発音される部分とほとんど聞こえない部分とがあります。単語の発音練習とともに、アクセントや文単位での練習も必要です。
アクセントが違うと別の言葉に聞こえる
日本語で「あめ」と書いてもそれが「雨」なのか「飴」なのかわかりませんが、話すとどちらかわかります。
理由は、アクセントが違うから。東京では「あ」にアクセントを置くと「雨」、「め」にアクセントを置くと「飴」の意味です。(関西では逆になります)
これは英語でも同じで、アクセントの位置を間違えると別の意味になったり、通じなかったりします。特に気をつけたいのが、日本語としても使われているカタカナ語です。
「オレンジ」「アウトレット」「フォーマル」など、ふつうに使いますよね。
最近は特にカタカナ語が増えて「ボキャブラリー」「イノベーション」「ダイバーシティ」などなど、かっこいい単語が並びます。
ぜひ使ってみたい気持ちになりますが、例えば「オレンジ」の「オ」にアクセントを置かず、日本語のように読んでしまうと通じません。カタカナ語を英語っぽく言おうとしたときに、ぶつかるのがこのアクセント問題です。
「Orange」の発音記号は「ˈɔːrɪndʒ」。
ちゃんと頭のところにアクセント記号の「’」が付いています。
発音記号と一緒に、アクセントも見落とさずに練習するようにしましょう。
フレーズをリピートしてイントネーションを身に付ける
単語ごとの練習と並行して、フレーズのリピート練習もしましょう。フレーズ練習で大切なのは次の3つです。
- 発音が適当にならないよう最初はゆっくり言う
- 文全体のイントネーションに気をつける
- CDの速さで言えるまでくり返す
まだ単語を全部復習できてなかったとしても、大丈夫。CDを聞いてフレーズをリピートし、うまく言えなかったりつまったところはまた単語に戻って練習してください。フレーズ練習で意識すべきことは、単語ごとのアクセントとはまた別の、文全体の強弱です。どこをはっきり言うのか、反対にほとんど聞こえない単語はどこなのか。単語だけを練習しすぎると文を話したときに不自然になりますし、フレーズだけ練習しても不正確な発音は直りません。お互いの間を行き来しながら、相乗効果で上達していきましょう。
正しい発音はどのぐらい必要なのか
発音を勉強したほうがいいというのはわかっても、一体どこまでこだわるべきなのか、考えますよね。海外旅行で英語を使いたい人、会社で英語ができると優遇される人。環境によって求められるレベルも異なります。正解はありませんが、間違いないのは「通じる発音で話さないと、いくら単語を覚えても意味がない」ということです。
間違って覚えた発音の上にどんどん新しい言葉を積み上げても、通じない言葉が増えていくだけ。それなら今のうちに基礎を見直して、今後は通じる英語だけをインプットしていくほうがはるかに効率的です。具体的に正しい発音で話せるとどんないいことがあるか、ビジネスと海外旅行の両面からご説明しますね。
ビジネスの世界で正しい発音は必須
英語ネイティブとビジネスの話をするときは、正しい発音が必須です。誤解を生む危険がありますし、不正確な英語を話す人よりもきれいな英語を話す人の方が信頼度が増すからです。もちろん、ネイティブ並の発音を身に付ける必要はありません。ネイティブの発音を聞きづらく感じるのは、本人のクセや方言など、教科書英語にはない特徴を持っているからです。なのでネイティブを目標にするのではなく、どこの国のどんな年代の人と話してもきちんと通じる英語を目指してください。
日本人は英語が苦手だとわかってくれてるから、と甘えるのも良くないですよ。そう考えている間に、英才教育を受けた若手にどんどん追い抜かれてしまいます。
海外旅行でも、通じる発音は有利
海外旅行の場合、正しく話すことのメリットは相手に「英語が話せる人」だと思ってもらえることです。例えばレストランでおすすめを聞くにしても、こちらが正しい英語で話しかければ、向こうも「この人は英語がわかる」と判断して詳しく教えてくれます。逆に「あまり理解してないな」思われると、面倒な説明は省かれてしまいます。
おすすめならまだあきらめがつくかもしれませんが、それがお得な割引情報だったりしたら、ちょっと見逃せないですよね。相手の英語を全部理解する必要はないので、こちらからどんどん質問しましょう。親切な人ならあなたに伝わるまで一生懸命説明してくれます。そうやって実践で覚えた英語は、日本に戻っても忘れない貴重なインプットになります。
ネイティブに発音を直してもらおう
あなたが英会話に通っていたりネイティブの友達がいたりするなら、協力してもらいましょう。英会話ではふつう、話を中断させないために細かい発音の訂正はしてくれません。ですから事前に「発音の練習をしたいので、正しくない発音があったら教えてほしい」と伝えてください。ネイティブは専門家ではありませんから、あなたの発音が「何かおかしい」と感じても、具体的には説明できないかもしれません。
もし相手が「え?」という顔をしたら、伝わらなかった理由が発音なのか文法なのか単語のチョイスがおかしいのか、確認してください。
英会話は相手のペースで進むことが多いですが、大切な学びの場ですから、こちらからも積極的に質問していきましょう。もしかしたらあなたの英語、発音を良くするだけで「通じる英語」に変わるかもしれませんよ。